QRコードで農産物の安心を作る

東急ストアでの買い物途中、パッケージにQRコードの印刷されている野菜を発見。
見ると、「手紙のついた野菜」と書いてある。

QRコードにはURLが仕込まれていて、アクセスすると

「福岡県みい地区コスモファームより手紙が届いています」

というメッセージのサイトに辿り着いた。
そこから、生産者の「手紙」=メッセージが読める、という仕掛けだ。


安全や物流についてのこだわりの説明、食べ方(楽しみ方)についての簡単な紹介など、まるで農家の方が話すような口調で語られており(一応、「手紙」という体裁だからね)、手元にある野菜を直接手渡されたような気持ちになる。
モバイル(QRコード)を介して消費者と生産者とのコミュニケーションを促進するのは、とても理にかなった試みだ。


わたしは、いわゆるニュータウンに住んでいるが、時々駅の広場には農家の方が朝穫りの野菜を並べ
「このネギはどこどこで採れたものだから柔らかい」だとか、
「このトマトはこれこれの作り方をしているから甘味が強い」だとか言いながら売っている。
生産者であり店主であるおじさんやおばさんのメンツにかけて販売しているのだ。
それが虚偽説明だとばれれば二度と買ってもらえないし、
その言葉を信じて購入し、ほんとうにおいしければリピーター客が獲得できる。
「顔で売る」という商売は、実はセーフティネット機能を持っているのだ。

スーパーのようなセルフ販売が主流になる以前、食品販売の現場では、
実はこういう「一言情報」が大切な購買決定トリガーになってきたのではないだろうか?
食の安全に関する事件や事故が多発する昨今、食品企業の倫理が話題になるが、
「見た目さえ取り繕えば、売れてしまう」
「生産者のこだわりや商品への愛情を伝える手段がない」
という販売方法そのものに販売者の倫理を狂わせるような魔力が潜んでいるのかもしれない。


「手紙のついた野菜」の取り組みは、セルフ販売の便利さと昔ながらの「一言情報」のよさとを
両立させる可能性を秘めていると思う。
物流経路トレースのためのバーコード活用と違い、あくまで生産者から消費者向へのメッセージツールとしての利用であれば、かかるコストは高が知れる。
パッケージにQRコードを刷り込み、モバイルサイトをASPで構築すればおそらく数十万円の投資で実現可能だろう。
価格への影響を最小化させつつ、コミュニケーションを最大化させることができる。


ちなみに、調べてみると、「手紙のついた野菜」をシカケているのは農家ではなくて、東急ストアさんらしい。
このような取り組みが他の企業や生産者団体などが模倣しながら進化し、生産者と消費者の間のコミュニケーションがよりリッチになり、双方(あるいは間に入る流通企業も)がWin-Win(-Win)になるしくみができるといい。
ソリューションのパッケージ商品、作ろうかな?(笑


ちょっとCMになってしまうが、現在MdNさんから発売中の「Web STRATEGY Vol14」の連載「モバイルマーケティング実践Hacks」で、このような「パッケージからのモバイルマーケティング」について書いている。

ここでは書籍からのQRコードマーケティングについての実例を紹介。