若者とモバイル、コンテンツと文脈
いつも素晴らしいインスパイアを与えてくれる、リサーチグループMOBILE YOUTHのレポート。
日本のマーケティングのシーンではすっかり「ソーシャルメディア」一色となってしまって、「モバイル」は特別なキーワードではなくなってしまってますが(最近そんなふうにボヤく機会も増えていますが(笑))、若者を対象にしたマーケティングを考えるならば、モバイルを通じてどんなことをするのか?って話題は無視できない塊だと思います。
そして、こことても重要ですが、モバイルマーケティングは、モバイルコミュニケーションだけで完結しているマーケティングのことではない、ということ。
でも同時に、モバイルを通じた対話であることが大事だ、ということ。
うまく言葉にできないことを、MOBILE YOUTHのレポートが、いい感じにまとめてくれてます。
「オープンフェイス開発」が教えてくれる、古くて新しい価値
BiND for Web Lifeという、ホームページ制作ソフトがあります。作っているのはデジタルステージという会社。
わたし、このBiND(バインド)というソフトのコンセプトが好きで、メジャーアップデートのたびに購入し、今月BiND5を購入しました。その他のソフトも含めると、たぶん総額20万円くらいはデジステ製品を購入していると思います。
また、そのうち、2、3、5についてはβ開発版でのテスターとしても参加させていただいてます。
彼らが今回、BiND5を開発するにあたって「オープンフェイス開発」という言葉を使っていまして、これがとても素敵な概念だと感じたのでノートに書いておこうと思い立ったのです。
「オープンフェイス開発」とは、開発者の顔が見えるサービス開発、ということ。
http://www.digitalstage.jp/project/make/openface/
BiND5の製品開発にあたって、ユーザーアンケートを実施し、2600超の意見を回収。製品の設計や機能改善に活かしたということが上のブログなどに綴られています。
これだけ見ると、「まあ、それくらい、どこの会社もやってるんじゃない?」と感じるかもしれません。でもデジステさんがすごいのは、UstreamやTwitterを使って、開発途中の逡巡やディスカッションを<見える化>し、途中経過にもユーザーを巻き込んでいるところ。単にアンケートを取るだけじゃなくて、それをもとにどう開発に活かしたかがWebやソーシャルメディアでFBされているんです。
一見、ふーん、な雰囲気ですが、ユーザー目線で考えると、よく似たプロセスがぜんぜん違うものだとわかると思います。
1)企業のアンケートに協力する→(企業側で結果をもとに開発&作成:ここ見えない)→ 製品リリース
2)企業のアンケートに協力する→ 集計結果等を見る、検討・開発プロセスを眺める → 製品リリース
2の場合 、リリースして出てきた商品への心理的な距離(ロイヤルティ)は1の場合の比較にならないでしょう。人によってはデジステさんの製品というよりは「じぶんの製品」という気持ちになってるはず。わたしもβ版テスターで参加させてもらって、発売前の製品に愛着を感じてしまったひとりです(笑)。
実感値ベースでは、製品購入しなくてはならないという抑えがたい気持ちが、確実に湧き上がります。
たとえば製品購入意向を 1(購入しない)〜5(絶対購入する) のスコアにしたとき、こうした製品開発への参加前後で2〜3程度のスコアアップが期待できるのではないでしょうか?また、そうしたプロセスを経ているからこそ、客観的にも使い勝手などは向上するはず。 プロセスに巻き込まれた人たちは「購入しない」と決断するのが難しいと思います。
こうした「ユーザー巻き込み型開発」は、ほんの数年前まではものすごくコストと手間がかかっていました。わたしが知っているところでは、食品会社のカルビーさんの新商品開発。Webが普及するより前から似た取り組みをされています。現在もカルビーのWebサイトの随所に見ることができるはずです。いわゆるユーザー調査的な堅苦しさはなく、まるでソーシャルゲームをプレイする感覚で、楽しみながら製品開発に巻き込まれる絶妙なシカケになっています。かなりお金もかかっていると思われますが、それ以上の投資効果があるからこそ、続けていらっしゃるのだと思います。
しかしいま、ソーシャルメディアを活用すると、「ユーザー巻き込み型開発」は驚くほど簡単に実現できます。やろうと決めて、運営の手間さえかけられるのならば、システムコストはほぼゼロ。FacebookやTwitterを利用すればいいのです。
逆に言えば、こうした開発手法を「やろう!」と決められるかどうかで、製品のクオリティと売れ行きが左右される時代になった、とも言えると思います。
そんな中、デジステさんから「オープンフェイス開発」という言葉が出てきて、はっとしました。
企業視点から見れば「ユーザー巻き込み」ですが、ユーザー視点から見ればこの取り組みは、開発する企業で携わる人ひとりひとりの顔が見えて、名前が見えるということ。つまり「オープンフェイス」なのです。ソーシャルメディア時代、ユーザーの「購入アクション」を決める基準軸に並ぶのは、製品機能や価格だけではありません。「作り手/提供側スタッフの個性」も重要なポイントです。
そして、ここがとくに重要だと思うのですが、社長でもない、有名プロデューサーでもない、カリスマでもなんでもない、たんなるメンバーも、自分のキャラクター「売り」にすることができる、それがソーシャルメディアという舞台のパラダイムです。おもしろい人がいるプロジェクトは、常に顧客とメンバーが盛り上がり、製品販売も盛り上がる……そういう世界だと思います。
…と書いてゆくと、じつは、なんてことはない、昔ながらの商売人のコミュニケーション手法そのままなんです。でもソーシャルメディアの普及で、こうした「ベタな」対話が、デジタル空間でも実現できるようになった。それは紛れもなじ事実だと思います
じつは、昨晩もデジステさんのUstreamを使った「オープンフェイス開発」イベントがありました。参加するのが、楽しいんです。デジステさんを中心とする、放射状のソーシャルグラフなのですが、参加者同士も不思議な連帯感を感じます。思わずTwitterで書き込みを複数してしまいました。
そしてまた、自分の中のデジステ製品へのちょっと新密度をアップさせた気がします(笑)
「オープンフェイス開発」というこの手法、使わない手はないと思いますよ。
「Web=ソーシャルメディア」時代のモバイルとは?
いつも記事連載させていただいている「Web Designing」さん主宰のセミナーで、昨夜は講師をさせていただきました。
「ソーシャルメディア時代のモバイルコンテンツ戦略」というタイトル。
この1年半ほど「モバイル」というタイトルのマーケティング系のセミナーは集客しづらい(笑)という状況を知っていたのでどうなることかと思いましたが、たくさんの方にお越しいただけて、ほっとしました。
約10年に渡る試行錯誤の中で成果を挙げてきた国内各企業の「モバイルマーケティングの知恵」をソーシャルメディア時代にどう活かしていくのか、というテーマで、めいっぱいの具体的事例とともにお話させていただいたのですが、19時からのスタートとは思えないほど、真剣なまなざしをいただきました。
満足度アンケートが楽しみです。
※5/18 14:30追記 参加された方の感想ツイートをご紹介させていただきます
@Shitatakasi なかなか、面白かったです!プレゼンテーターさんはまだまだガラケーの可能性を見出したい!っていう考えを持つ人で、そういう人は自分の環境にはいないと思うので、違う観点を持つ人の話を聞けてよかったです^^*
「WebDesigningの読者はデザイナーやプランナーさん」と勝手に決めつけていたのですが193さんは大学生とか。
勉強熱心さに脱帽です。きっとi-modeスタートしたときは小学生ですよ?
「伝えられた」歓びを感じてます。
このセミナー、役職系の人にも聴いてほしいなぁ。。。
「戦略」は担当者ひとりのチカラでは動かしにくい。成功戦略を実行できる組織の風土や文化が大事、というお話をさせていただきました。モバイル×ソーシャルの時代には、そのベースを持つ企業と持たない企業の差がつきますよ、と。まるさんのTweetはそこへの反応かも?
※193さん、まるさん、Tweet転載させていただきありがとうございます!!
講演後に同じ業界の方ともお話させていただきましたが、「モバイル」にはまだまだものすごい可能性や影響力を秘めた事例がたくさんあるのに、実は眠っているものが多いように思います。
「ソーシャル」と「モバイル」の波が同時にやってきている世界の市場に向けて、日本のモバイルのノウハウをもっと胸張って紹介していってもいいはずです。
「もう日本はだめだ。外国は、みんな中国に興味がある」となってしまう。もう日本語を勉強したがる外国人はいないと言うが、うそだ。今年は、(コロンビア大学の日本文学のクラスには)去年の倍の学生が集まった。日本では、ジャパン・バッシングからジャパン・パッシング(日本外し)など、誰かが言い出すと、みんなそれにならってしまう。
日本永住を決意したドナルド・キーン氏に聞く「震災後、米国人の親日感情は最高潮」
最近のスマホブームは、旧来のモバイル業界人にはとまどいを与えているようですが、ドナルド・キーンさんが指摘する通り、過ぎた心配や自己否定をする必要ないのではないでしょうか。
自分たちのしてきた仕事の中には「スマホ」「ガラケー」の壁を越えて通用する真理があることを信じて、いい仕事してゆきましょう。
2011 50の若者キートレンド
(c) きら|写真素材 PIXTA
新年、あけましておめでとうございます。
年末年始と、意外や景気が戻ってきているようだ、という速報が聞かれます。楽天的にはなれませんが(笑)、米国の景気が回復しているといいますから、そのおこぼれなのでしょうか。(経済について詳しいわけではないので、インチキな予測をするつもりはありませんが)新年に明るい話を聞けるのはいいことだと喜んでます。
さて、顧客満足戦略という視点から考えると、今年は「コミュニケーションの新しい形・新しい波」が本格的に花開く年になると読んでます。今年後半あたりには、新しいマーケティングのモデルだとか、ユニークなビジネスやサービスが話題になっているのではないでしょうか。
わたしが直接かかわるところでは、世界的にスマートフォンをベースにした「モバイルWebの活用」が本格的に普及している環境のもと、欧米の企業と大学研究者による成功事例の研究と抽象化が進み、「モバイルWebの戦略的活用」に脚光が当たるのではないか、と楽しみにしています。(あえて「モバイルマーケティング」と言わずに「モバイルWebの活用」と書くのは、モバイル単体ではなくて他のコミュニケーション動線と連動するという意味で…。)
ちなみに、こういう仕事において日本の大学は、ほぼまったく機能してません。ことマーケティングにおいては、欧米のビジネススクールを中心とした産学チームが動き出すのを待つしかないんですね、悲しいけど。
外に持ち出せるネットメディアであり、リアルの対話に割り込むことのできるツールでもある「モバイルWeb」の普及によって、リアルとネットとの境界線は、ますますあいまいになってゆきます。モバイルという「界面活性剤」によって旧来のマーケティングとWebマーケティングが混ざりあう……。
さらに、日本の「ケータイ」黎明期とちがって、いまのWebにはソーシャルネットワーキングや、ソーシャルメディアという話題拡散のシカケが十分に仕込まれています。いったいなにが起きるんでしょうね?
ものすごくワクワクします。
…と、前ふりしたところでおなじみ、英国のマーケティング会社「Mobile Youth」が発表する2011年の若者トレンドレポートを紹介します!
なんと、12ページに、わたしのコメントも掲載していただいてます。
あー、びっくりした(笑)。
世界を旅しながら若者のトレンドをリサーチするMobile Youthがまとめたレポートは、説得力があります。
あなたは、どのトレンドに注目しますか?
エンゲージメントを加速する「ゲーミフィケーション」
「Gamification(ゲーミフィケーション)」は2011年のマーケティングキーワードになりそうです。
概念的にはユーザーとの対話にゲームの概念を導入して、製品やサービスへのロイヤルティを(一気に)高めるマーケティング手法、ということのよう。エンゲージメントの具体的戦略の一分野、という位置づけのようでもあります。
米国では年明け早々に「Gamification Summit 2011」なるものも開催されるらしく、また他の「エンゲージメント」をテーマにしたカンファレンス等でも話題になるようです。
わかったような、わからないような…まさに「エンゲージメント」という言葉が日本に紹介されたときに似た状況ですが、素敵なスライドがあったのでご紹介。
じつは最近、まさに「Gamification」な案件をお手伝いしています。
ゲームが持つユーザーの引き込み力、価値観の浸透力は、テキストや映像、メールでのコミュニケーション以上のものがあります。しかも、モバイルデバイスの発達により、バーチャルとリアルを横断するユーザー体験設計もカンタンにできるようになりました。
2011年、このキーワードに注目しつつ、いい仕事をしてゆきたいと思います。
顧客が熱狂するネット靴店「ザッポス伝説」
顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか
- 作者: トニー・シェイ,本荘 修二,豊田早苗
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/12/03
- メディア: 単行本
- 購入: 15人 クリック: 250回
- この商品を含むブログ (69件) を見る
以下、アマゾンにレビュー投稿したものを共有させていただきます。
いや、これ、本当にいい本でした。
従来常識の「逆張り」とも言える戦略によって成功を収めたネット通販会社「ザッポス」の創設者の自叙伝。
「ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは」などで紹介されているザッポスの<成功法則>がどのように生まれたかを、トニー・シェイの回想、役員、社員らの証言、実際に社内で交わされたメール、ブログなどを交えて知ることができる貴重な一冊。
ザッポス以前のトニーの物語から、ザッポスでの成功までを時系列で読み進めるうちに、まるでトニーの親友か、共同経営者にでもなったかのようなバーチャル起業体験ができる。
また9歳から起業家だったという(笑)トニーは、自らの失敗や成功を経て辿り着いた<秘訣>をシェアしてくれている。
とくに「ポーカー経営学」という章の全34項目のリストは、他では得られないオリジナルの貴重なコンテンツだと思う。
●勝ったゲーム数の多い人が最終的に一番多く儲けるわけではない
●うぬぼれない。見せびらかさない。…
●長い目でみるゲームであることを忘れない。
事業運営の物語としても、経営の教科書としても、すべての起業家・事業家は一読する価値がある。
しかし、本書はいわゆる「ベンチャー関連書」ではない。新しい時代の「ビジネス哲学書」・「生き方・働き方のヒント集」だと言える。
人と人がソーシャルメディアでつながる現代社会で、企業で働き、家族や同僚と生活し、顧客と取引先とエンゲージメントし、ビジネスで成功するために、結局、大切なもはなんなのか? そのヒント、事例が詰まっている。
そういう点では、すべてのビジネスピープル、就職活動をする学生さんにもぜひ一読をお薦めしたい。
これまでの「ビジネス」という言葉のイメージとは対局的なところに成功の秘訣がある、と知ることで、希望の光を得る人は多いだろう。
「企業とは利益を追求する存在だ。金儲け主義で当然。そのどこが悪い?」
という問いに、違和感を感じながらも、うまく反論できないもどかしさを感じたことはないだろうか。
最終章の「ハピネスのフレームワーク」では、その問いに答えを与えてくれている。
原書は、2010年6月に米国で発売され、すでに300万部以上売れているらしい。
このビジネス哲学や秘訣を日本で、このスピードで共有してもらえたという価値は大きいと思う。
日本でも「ハピネス」をベースに成長してゆく企業が増えるといい。
ザッポス セミナー11月4日9日開催
リクルート時代の同期、カングロ株式会社の藤井さんが
「ザッポス・エクスペリエンス・セミナー」報告会
を開催します。
「ザッポス」は、Dr.本荘の「ソーシャルウェブ革命の衝撃」や書籍「ザッポスの軌跡」などで日本でも知られるようになった、通販企業。
その、類まれな<顧客満足中心主義>が、ソーシャルメディアの台頭を背景に、口コミされ、伝説を生んでいます。
「You guys rock!(あんたらスゲーぜ)」「Your service was incredible(信じられないくらい素晴らしいサービスだった)」――。
靴や衣類、ハンドバック、アクセサリーなどを扱うオンライン通販会社、ザッポス(Zappos.com)のサイトは、顧客からの感謝と賛辞に溢れている。日本人にはあまり馴染みのない企業だろうが、本国のアメリカでは創業10年足らずにしてすでに伝説となりつつある存在である。
自らを「靴を売ることになった顧客サービス企業」(A Customer Service Company That Happens to Sell Shoes)と呼び、語り草は数知れないほどの卓越した顧客サービスが特徴だ。ザッポスは、2007年の米小売業協会(National Retail Federation survey)の調査で顧客サービスにおいて、かつて伝説をつくったノードストロームやオンライン販売トップのアマゾンを抑えて2位に選ばれている。
(略)
例えば、多数のブログに引用・リンクされた、ある女性顧客のブログの一文がある。彼女は、病床のやせ細った母のためにザッポスに靴を注文した。小さくなった足には7足のうち2足は良いが5足は合わなかった。
それから病状は悪化し、靴どころではなくなった。そこにザッポスから「返品はないですか」との電子メール。その女性は「母が亡くなり、なるだけ早く返品する」と返信をした。するとザッポスから「(会社のポリシーでは顧客が宅配手配をせねばならないが)宅配業者にお宅まで品物を取りに行かせます」とのこと。
それで配慮してもらったとほっとした彼女。そしてブログを書く前日に、自宅に美しいフラワー・バスケットが送られてきた。そこにはザッポスからのお悔やみのカードが…。思わず彼女は号泣したという。
ザッポスが10月に開催した「エクスペリエンス・セミナー」(コーディネーターは「ザッポスの軌跡」の石塚さん)に参加してきた藤井さんによる報告会。
なんとも楽しみではないですか?
まだ申込み可能とのこと。
顧客サービスのお仕事をされている方には、ぜひお勧めしたい。
4日と、9日に開催されます。
お時間の詳細などは、こちらまで。