モバイル通販のレバレッジポイント

先週池袋で開催された「ネット&モバイルソリューションフェア」の復習
2こ目は、このイベントのテーマ「通販」について。

2日目のトップ講演、Stylifeの岩本社長のプレゼンテーションが快活でよかった。
勢いに乗っている企業トップの話は迫力がある。

岩本社長の話を極端に整理するとポイントはふたつ、ということになると思う。

  1. 誰も参入していない市場に、信念を持って参入せよ!
  2. 市販雑誌はカタログと似て非なるもの。雑誌は集客&お客をワクワクさせること&印刷コスト軽減を同時に解決できる


裏を返すと…

  1. もうこれからファッション通販に参入してきても、完全に「後発組」だよ!
  2. 雑誌発行なんかしようと思っても難しいよ。編集部運営ってのがあるんだから


という勝利宣言とも聞こえなくもないのだが(笑)。


「通販企業が広告費として計上するカタログ制作費は、売上を上げようとすればそれに比例して増大するが、WEBは売上に関わらずほぼ固定である。それゆえ、損益分岐点を越えさえすれば、利益が急激に増える。
このコスト構造を押さえないまま、儲からないと相談に来る人が多くて驚く」


と、売上-コスト構成のパイチャートや損益グラフを持ちだして説明してくれたのはネット通販の社長講演としては新鮮で、ワクワクした。

岩本社長の話は、まったくそのとおりだ。
そして、それでもフリーペーパー×ファッション通販事業を始める企業が後を絶たない。
そのモデルだと、かなりよくやって利益10%、普通にやってトントン、ちょっとしくじると即赤字だ。
自分で体験しているので、その苦しさがよくわかる。


かと言って、スタイライフのように通販事業と雑誌事業を両立させるのは半端なことではない。
きちんと「売れる雑誌を作る」だけの作業がものすごく難しく、出版専業社が四苦八苦しているのが現状である。
一度でも売れない号を作ったら、即コンビニエンスストアは取扱い中止。
コンビニ流通が途絶える→ 発行部数激減→ 書店扱いも縮小→ 廃刊
という、死の坂道を転げ落ちることになるのだ。

当のスタイライフ社も、雑誌をここまで仕上げるのに相当の時間をかけてきた。
また、「LOOKS」編集部の生い立ちは特例中の特例で、もともと出版社で通販機能付き雑誌を担当していた編集スタッフが「売れる雑誌の作り方」ノウハウを持って移籍してきたのだ。
そんな機会はそうそうあるものではない。

一見、ふんわりと見えるが、じつは簡単に真似できる組織でないことがわかる。
岩本社長は、千載一遇のチャンスを活かして組織を作り、
信念を貫いてアパレル通販に邁進してきた。
そしていま、その組織や人材、ビジネスモデルが厚い参入障壁となっている。
素晴らしいと思う。


イベントで「つい最近、モバイルアパレル通販をスタートさせた」
という方とお話した。つい、

「この商売、チャンスは大きいけれど、甘くないですよ。
 簡単そうに見えて、利益出せるまでは相当の辛抱が必要です」

と言わないではいられなかった。
アパレル通販事業は、ほんとうに難しいのだ。


とは言え
「少なくともモバイル・アパレル通販の黎明期を作ったのは自分たちだ」
と、少なからず自負のあるわたくしとしては、実のところ悔しかった(笑)。


蛇足ながら、実はいまごく手近に、事業のアイデア、雑誌編集部、人材……という普通では入手できない機会や経営資源が、ころころっと、しているのだ。
ないのは資本(笑)。
これは……なにかのお告げか?
意欲のある投資家や事業家の方がいたら、ぜひご紹介しますのでご一報を。