束になって、かかる

DoCoMo2.0
「そろそろ反撃してもいいですか?」というその広告コンセプトは酷評されているようだが、駅貼りポスターやTVCMの好感度が高いのではないか。
年の暮れに、備忘メモ代わりの広告批評をエントリーしておきたい。

まずキャスティングがいい。
浅野忠信長瀬智也妻夫木聡瑛太吹石一恵土屋アンナ蒼井優北川景子
すごすぎて、いろんな意味でテレビドラマでは実現できないラインナップだ。
また、長瀬くん、蒼井優ちゃんはこの広告シリーズ登場あたりから他企業との広告契約が増えているように思う。
それがまたDoCoMoのCMの長瀬くんや優ちゃんを盛り上げているようにも見えるのもいい。


「え? そんなに豪華なラインナップのタレントさんを何人も?」
と驚かせたのは、たしか05年の資生堂「マキアージュ」の広告キャンペーンが走りで、
その後、その手法は「TSUBAKI」などにも継承されている。
専門的になんと言うのかは知らないが、個人的に<束になってかかる戦法>と呼んでいる。

<束になってかかる戦法>は

・最初に目にしたとき、誰もが「すごい!」と感じる
・口コミや話題の提供性に優れている
・価値観の多様化に対応。誰かしら「お気に入り」タレントを見つけ、引っかかる
・起用するタレントとクライアントとの関係性をフラットにすることができる

…といったメリットがありそうだ。


ただ、そのキャスティングの投資に見合うだけの効果につながるのか、あるいはコンシューマーの記憶に留まるのかという疑問は残る。
実際、05年当時の「マキアージュ」に登場した女性タレント4名が誰だったか?
思い出せる人は少ないのではないだろうか。
(正解: 伊藤美咲篠原涼子蛯原友里栗山千明

もっとも、「TSUBAKI」で資生堂が再び同様の手法を使ったことを見ると、ポジティブな評価がされているのだろうと想像できる。

今年のDoCoMo2.0キャンペーンの<束になってかかる戦法>が秀逸だと感じたのは、TVCMの中でそれぞれの登場人物をしっかりキャラクター化し、CMをまるで連続ドラマのような物語に仕上げている点だ。
長瀬くんとアンナ、瑛太蒼井優ちゃん、吹石さんと妻夫木くんがそれぞれ「まんざらでない」関係にあるらしい様子だし、浅野くんはいろんな女の子にちょっかいを出しているようなのだ。
北川景子ちゃんの影が薄いのは気のせいか?

また妻夫木くんの会社の上司であるらしいキム兄ィの存在感の方が大きいのもいい。
(脇役にもきっちり配慮しているあたりが、ますますドラマ的なんだよなぁ)
キャスティングだけでなく、企画でも<束になってかかった>結果、
「この先、このCMにはなにか展開があるのかもしれない」…と考えさせ、期待させることに成功しているのだ。

シーンの物語化 → 記憶定着 / ブランディング

という効果は、たしかにキャラが多くなくてはできない仕掛けである。


「有名人ばっかりキャスティングできる企業はいいよなー」とか
「さすがタグボートの仕事だよなー」
と、丸めてしまうのではなくて、素材(キャスティング)を活かす方法や、付け合わせによる引き立て方など「料理の妙」をここから学んでおくのが大事だと思う。

自分の仕事に<束になってかかる>戦法を使えないか、考えてみるだけでもいい。
何を<束に>するのか、それをどうやってお客に伝えれば効果的になりそうか、といろいろ考えてみるといい。

意外なものを束にできるんじゃないかな。