「エコシステム」からmixiの戦略を考える。
今日、mixi社の「mixi meetup 2010」メインセッションに参加してきました。いや、本当にワクワクしました!
Ustream中継があったこともあり、Twitterやネットニュース、ブログなどで関係者大興奮の様子が伝えられています。
はてなやDeNAといった、「ライバルなのでは?」と思われていた国内ネット企業との提携、中国最大のSNSである、Renren.com(…とアナウンスされていたけれど未確認)との提携、韓国最大のSNS、CYWORLDとの提携!!
「IVSで話のあったサービスの詳細が発表されるんだろうか」
と、高をくくっていた多くの人々の予想を超えたニュースだったと思います。
わたしもそのひとり(笑)!
DeNAの守安さんが
「この場にいることに、なにか、その、違和感を感じます」
と、コメントし、会場がウケたあたりから、ドキドキ感が高まったように感じました。
そして中韓の巨大SNSとの提携を聞いたあたりで、「キター!」な、気分に。
SNSのキーストーン戦略
今回のmixiの打ち手、いろいろ言われていますが、どうも「キーストーン戦略」っぽいのです。
キーストーン戦略とは、企業がエコシステムを構築するための戦略です。
キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム (Harvard Business School Press)
- 作者: マルコ・イアンシティ,ロイ・レビーン,杉本幸太郎
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2007/09/20
- メディア: ハードカバー
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この本で書かれていることを元に、「日本のモバイル業界について考える」というセミナーを実施したときのスライドが参考になるかもしれません。
【エコシステムとは?】
- 動植物の「生態系」のメタファー
- 参加者が個別に活動しつつ相互依存
- 全体として共進化 (多様化、冗長化)
- 持続と共栄をもたらす
【ビジネスエコシステムとは?】
- 複数の企業が参加
- 参加企業が個別に活動しつつ相互依存
- 全体としてイノベーションを創造
- 持続と共栄をもたらず
【キーストーン戦略】
複数の企業が相互に連携し、価値やイノベーションを生む物理的・知識的・資本的な系を形成する戦略。
その中で「キーストーン」と呼ばれる企業は、系の一部を占有しながらも、自らが取得する以上の価値を系に創出する役目を果たす。
キーストーン企業は、系を成長させながら、徐々に垂直支配をする。Mobile Business Ecosystem In Japan1View more presentations from Kenichi Nakaya.
海外SNSとの「ノードの接続」
「Facebookに対抗するために、とにかく今、手を握れる企業と手を組んだ」
「はてなやYahoo、楽天など、mixiからのトラフィックを期待する企業と組んだだけ。とりあえず互いに様子を見るのだろう」
という、見方も、それはそれで正しいと思います。
海外SNSだって特に断る理由もないので、お付き合いしているだけかもしれないよ。
TechWave 湯川さん
というのも、確かにそのとおり(笑)。
しかし、各国のビッグSNSと提携し、「仕様の統一化」という流れができるとなれば、mixi(日)-renren.com(中)-CYWORLD(韓)-??(欧州企業?)という地球規模のソーシャル・プラットフォームができます。
まっさきにこのプラットフォームのメリットに期待を抱いているのは、アプリ開発企業でしょう。
どう考えても、この流れに乗らない手はありません。ワンソースで数億人規模の市場へと漕ぎだせるプラットフォームなのです。
(ちなみに、エコシステムを作る側の「キーストーン企業」に対して、開発企業のように、それに乗っかる側は「ニッチ企業」となります。)
【ニッチ戦略】
エコシステム内で、自らの専門性を特化させることで、系に対して価値をもたらす。
自由に系を行き来し、系にイノベーションをもたらし、系を活性化させる役割を負う。
接続する系の数をふやしたり、自らの価値を高く買ってくれる系に乗り換えるという動きをする。
各国の一番手SNSは、それぞれの国内でキーストーンとして機能しており、かつそれぞれが国境を越えて市場を食い合う可能性は低いと言えます。
言葉の壁のせいなのか、文化のせいなのか、事実として、Facebookのように言葉の壁を越えてくるWebサービスは、米国発のものばかり。
(「百度」の日本進出は記憶に新しいところですが。はやってますかね?)
米国以外のプラットフォーム企業は、いたずらに他国への征服戦略をしかけるよりも、このような共生戦略を結んだ方が成功率が高いのかもしれません。
少なくとも、土地勘のないところに無理やりにエコシステムを作るよりも、現地のすでに成果を出しているエコシステム(系)同志が接続し、相互にイノベーションを創造するほうが、資源は有効利用されます。
今回のmixiプラットフォームと同様の仕様のAPIを各国SNSが持つ体制ができるなら、アプリ開発企業だけでなく、オープン・ソーシャルグラフを利用する企業Webサイトなども同様の恩恵を受けることになるでしょう。
デバイスや情報家電へのソーシャルメディアの組み込みも報道されていますが、ネット企業と比較して利益率の低い(コストの高い)家電メーカーは、ワンソースで一定の利用規模が見込める環境が創出される見込みがあってこそ、このエコシステムに参入できるわけです。
将来的には、このプラットフォーム連合で、開発企業向けのファンドの立ち上げや、各国への進出支援などの可能性も広がるのではないでしょうか。
「プラットフォーム」が、単なるWebのプラットフォームでなく、ビジネスのプラットフォームになる可能性を秘めています。
国内の企業連合対決か?
上記のように、海外のSNS企業との提携を「キーストーン戦略」として読むと、逆に、「モバゲー」や「はてな」といった、国内の一見ライバルと目される企業との提携も、理解しやすくなります。
と言う見込みが立つのです。
「イノベーションの加速」や「サードパーティの求心力」という点に注目すると、手を組むべきキーストーン企業は、あまり遠く離れた業態ではいけません。
「一見したところライバルのように見えるほど似たサービスを提供していて、しかし、その実、市場を食い合わない企業」というのが、じつは最も理想的な相手なのです。
mixi連合 VS GREE連合
一方、mixi meetupの時間にぶつけるように、提携を発表したGREEの戦略も気になります。
カカクコムやリクルート、ニコニコ動画など、有力サイトを持つ企業との連合です。
これをもって、「mixi連合 VS GREE連合」という話もたくさん出ていますが、こと「エコシステム拡大戦略」という視座で考えると、mixiに勝負あり、ではないでしょうか。
こちらもキーストーン企業の連合であることは確かですが、それぞれがかなり異なる業態であること、国内企業だけのエコシステム系であること、を考えるとそこに参入するサードパーティや企業のメリットが、相対的に弱い。
ニッチ企業が参加するメリットが低いということは、そのエコシステムが持つ「イノベーションを創出するチカラ」が弱い、ということ。
中長期的な戦いでは、勝負を大きく分けます。GREE陣営は、早急にエコシステム拡大戦略を練り直すべきではないか、と余計な心配をしています。