キャリア主導のモラルハザード?

ドコモさんのiメニューのサイト順位が入札制になったというニュース。
はてなのブックマークのコメントには賛否両論ある。http://b.hatena.ne.jp/entry/http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20373070,00.htm

利用者数では順位の変動があまりなく、入札制を導入することで活性化を図るのが目的(ドコモ)

とのことだが、「人気サイトを見たい」というユーザーニーズはどうなってしまうのか。
「ユーザーの便利」という観点を失わないようにしてもらいたい。


現在でもiメニューの上位表示を狙う場合は一斉に大量の広告を投下し、サイトへのアクセス人数を増やすという手法が取られている。
そう考えると

「今だって上位表示にお金けてるんだから、これの何が悪いのか」

という意見も一理あるように思える。
ドコモからすれば

「ここで高額入札してもらえば確実に順位アップです。効率的です」

ということかもしれない。


アクセス数順位がルールなら、たとえ一斉広告で上位に躍り出たとしても、コンテンツがつまらないサイトは時間経過とともに順位は下がる。
だから、上位表示されているサイトは上位サイト間でコンテンツの魅力づくり、ユーザビリティアップにしのぎを削り「何度もアクセスしたくなるようなサイト」を目指して努力する、という系が形成されていたのだ。
結果的にユーザーのメリットになっているのがいい。
巡り巡ってドコモさんの課金代行ビジネスを拡大させる。
CPががんばればがんばるほど、参加するプレイヤーのメリットが生まれるという好循環の生態系ができていたのだ。


「順位変動による活性化」の名の下、お金で順位が決まるとなると話がガラリと変わる。
資本力のあるCPはここぞとばかりにお金を突っ込むだろう。
ユーザーからできるだけお金をたくさん取り、入札資金を稼ぎ、投下し、さらに新規ユーザーを獲得するというサイクルが最も効率的だ。
コンテンツの質やユーザビリティ云々の優先順位は下がり、短期売上獲得の順位が上がる。


公式サイトだから、カテゴリー内の競合先はそうそう変わらない。
相手はよく知るライバル企業ばかり。
利益度外視で、メンツをかけたチキンレースになるかもしれない。
逆に談合グループが形成される可能性もある。そうなれば、上位の顔ぶれは結局変わらない。


良質なコンテンツ提供することで一定の掲載順位を獲得してきたCPからすれば
「やる気を削がれること、この上なし」だ。
口コミ利用を促進し、利用ユーザー数をキープして上位掲載している、という例もあったはずである。
その場合、人件費やコンテンツ制作費が、広告費の代わりになっているのだ。
広告コストをどのように捻出すればいいのかと頭を抱えるだろう。



また、iメニューは、かねてから初心者ユーザーの利用が多いといわれてきた。
その初心者ユーザーが最初に訪問するサイトが、必ずしもユーザーメリットを優先していないということでいいのか?
「サイトでお金使って! これ買って!」
というメッセージを投げかけるサイトばかりが並ぶiメニュー。。。。
利用者はiモード全体に対していい印象を受けないはずだ。


キャリアが率先して、モラルハザードを誘導してないか?

今回の入札制メニュー施策を通じて、目に見えてトクをするのは、結局、ドコモさんだけなのである。

キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム (Harvard Business School Press)

キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム (Harvard Business School Press)




以前のエントリーでも紹介したこの本によれば、ビジネス生態系の基幹的存在(キーストーン)が、他のプレイヤーの利益まで取り上げるような「ひとり勝ち」を志向すると、一時的にそのキーストーンの利益は上がるが、中長期的には生態系そのものが崩壊してしまう、という。


これまで自らが業界をリードし、9年もかけてCPやユーザーと作り上げてきた生態系を根本から壊すような真似をしてほしくない。



入札制そのものに反対するのではない。
入札価格順メニューリストしか見られなくなる、ということを危惧しているのだ。
たとえば「アクセス数による人気ランキング」というページを並列に提供してはどうだろうか。