モバイルの影響力

来たる3/15には好例のファッションイベント「TOKYO Girls Collection」が開催される。
1回の開催に2万人以上の観客がやってくるが、イベントの主催はケータイサイトである。

ケータイ小説は、その気になればいつでも無料でサイトで読めるにも関わらず、
その書籍の売り上げ実部数100万部を超えている作品もある。


TGCを主催するゼイヴェルのケータイサイト会員も
携帯小説を連載するサイト「魔法のiらんど」の会員数も会員数は数百万人いると言われる。
しかし、実際にアクティブに利用している会員数はその一部である。
アクティブな会員数に占めるイベント参加する人の人数、あるいは書籍の購買者数を算出すれば、
驚くほどのコンバージョンレートになっているだろう。
いずれも、WEB空間でのヒットがリアルのヒットを生んだ実例である。


なぜモバイルはこれほど大きな影響力を持つのだろうか?


最近ではモバイルの利用に関するマーケティング調査が多く行われていて、
こと若い世代においては「お風呂にまで持って入る」
というほどの密着性が指摘されている
(お風呂でつかえる防水ケータイが増えたのはそういうニーズからだという)。

モバイルWEB空間にコンテンツを置く、ということは「見たい」というニーズに対する接触機会ロスが限りなくゼロにするということだ。
しかもケータイ小説やファッション情報はコンテンツが日々更新される。
「ひまつぶし」のつもりの閲覧が「今日はどんな?」に変わり、
習慣化して「今日も見なくては」と変わってゆく。
たとえば新聞の連載小説も、昼ドラマも、1日分を見ただけでは
熱中できないが、何回か続けて見ているうちに引き込まれてゆく。
しかもファッションや物語という、日頃話題にすることのできるコンテンツは口コミにも乗り易い。
人気と言われるモバイルのサービスは、このような「引き込み」の効果をレバレッジとして利用している。


しかしコンテンツ閲覧の習慣化が、ファッションイベントへの動員やケータイ小説の書籍版購入などリアルアクションに結びつく要因のすべてではない。
毎日のようにメールマガジンを発行している通販企業がいちばんの売り上げを誇っているわけではないのだ。
マーケティングデータはそこに回答を示すことができない。
わたしはモバイルが持つ「親近感」や「身体感覚」が重要な要素になるのではないか、と読んでる。


モバイルは単なるツールではなく、自分の体の一部であるかのような感覚は誰もが持っている。
気のおけない関係の人とのコミュニケーションのための道具であり、なにかしらの温かさを感じる。

人気のモバイルコンテンツは、頻繁なコンテンツ更新と同時にサイトの「テイスト」や人格を大切にしている。利用者はノリやテイストがあるかどうか、またそれらが自分にフィットしているかを敏感に判断している。
そしてそのサイトが自分のためのコミュニティであると感じられた時、利用者の心のチャネルは大きく開くのだ。
それゆえ、利用者層のリアルな生活や文化について、コンシューマーインサイトについての研究がこれまで以上に注目されるだろう。

[影響力の大きさを決める要素]

  • コンテンツの入口の広さ
  • コンテンツの更新頻度
  • コンテンツ編集のテイスト/共感性


モバイルはこれまでにないメディア特性を持っている。
情報を獲得するためのメディアであると同時に個人のコミュニケーションネットワークそのものであり、また、個人認証装置であり、自己実現のための情報発信プラットフォームでもある。
モバイルマーケティングでは既存のフレームや常識が通用しないことがしばしばある。
しかし、それこそが現代に生きる人たちの「リアルな行動」だ。

モバイルをきっかけに、新しい企業と個人の関係性が生まれるのではないかと期待してやまないのだ。